「高齢者は介護が必要になったら施設に行くしかない」と思っていませんか?
前回の記事では過疎地域の現実と、そこで暮らし続ける高齢者の姿について解説しました。
でも、実際、ほとんどの高齢者は施設や高齢者住宅などで暮らして、不便な田舎で暮らす高齢者は減っているんじゃない?と思っていませんか。
ひょっとしたらそう考えるのは、ごく自然なことかもしれません。
けれど、日本全国の多くの高齢者は「それでも自宅で暮らしたい」と願い、
そして実際に、介護を受けながらも在宅で暮らしている人が大多数です。
厚生労働省「介護保険事業状況報告(月報・暫定)」によれば、
介護が必要になった高齢者のうち、約65.4%が“自宅での介護を受けている”という実態があります。
施設での介護は19.1%に過ぎず、「施設=当たり前」ではないことがわかります。

※厚生労働省「介護保険事業状況報告(月報・暫定)」/令和6年12月分
ではなぜ、多くの高齢者が“不便でも自宅での生活”を望み、選び続けているのでしょうか?
本記事ではその背景を、データと現場の声の両面から掘り下げ、在宅で暮らす高齢者の実態にスポットを当てていきます。
なぜ高齢者は施設ではなく“自宅”を望むのか?
「住み慣れた家で最期まで」──多くの高齢者が望む“在宅”
全国の高齢者に「人生の最期を迎えたい場所」を尋ねた日本財団の調査によると、最も多かった回答は「自宅」(58.8%)でした。
理由としては「住み慣れているから」「自分らしくいられるから」が上位に挙げられており、多くの人が自宅を“人生そのもの”と重ねて捉えていることが分かります。

先に紹介した通り、要介護状態にある高齢者のうち65.4%は在宅介護を受けている、ということからもわかる通り、日本の介護は圧倒的に在宅中心であることがわかります。
つまり、「希望」だけでなく「現実としても」多くの人が自宅で暮らし続けているのです。
「自分らしく生きたい」──高齢者の生きがいとプライド
同調査では、「今後の暮らし方」に関して、約7割が『自分らしく生きていきたい』と回答しています。
「施設に入るのが当たり前」「不便なら引っ越せばいい」といった外部の視点とは裏腹に、本人たちは“自分らしさ”を捨てたくないのです。
施設では自由が制限される、知らない人との共同生活に気を使う、という精神的な負担を避けたいという声も少なくありません。
だからこそ、少し不便でも「自宅がいい」という選択が生まれます。
中山間地でも「最期までこの家で暮らしたい」と願う人が9割超
都会であればサービスやインフラも発達していて、医療機関等へのアクセスもいい。でも、地方では自宅で暮らし続けることは無理なんじゃないか?と思う人も多いのではないでしょうか。
興味深い情報で、秋田県大館市の中山間地域で行われた住民調査では、住み慣れた自宅で最期まで暮らしたいと回答した人は、A町で95.3%、B町で91.1%という圧倒的な多数でした。
買い物、通院、交通の不便さなどさまざまな課題があるにもかかわらず、不便よりも“愛着”が勝る。
不便があっても、楽観的・ポジティブに現状を受け入れて生活する姿が見えます。
そして多くの人が「人に迷惑をかけたくない」「まだ自立しているから」と、プライドを持って生活しているのです。
※論文 総合政策 = Journal of Policy Studies「中山間地で暮らす高齢者の意識調査」
都市部だけでなく、地方でも“在宅”は主流になりつつある
過疎化が進む中山間地域では、施設も介護サービスも限られているため、自宅での生活を支える体制づくりが急務となっています。
特に「雪かき」「庭の手入れ」「通院の付き添い」といった日常生活に根差した支援へのニーズが高く、地域密着型の支援の取り組みが求められています。
「では実際に、家で暮らし続けるにはどんな現実的な課題があるのか?」
という観点から、在宅生活が抱えるリスクや障壁、そしてその乗り越え方について掘り下げていきます。
自宅での生活には“見えないハードル”がある
古い木造住宅が多い地方──その実態とリスク
地方部では、昭和期に建てられた木造住宅が多く存在しています。総務省の「住宅・土地統計調査(平成30年)」によれば、高齢者が住んでいる住宅のうち、昭和55年以前に建築されたものが多くを占めています。
これらの古い木造住宅は、段差が多い、手すりがない、浴室やトイレが狭いなど、高齢者にとって生活しづらい構造となっている場合が多く、転倒や骨折などのリスクが高まります。また、耐震性や断熱性の面でも現代の基準を満たしていないことが多く、安心して暮らすためには改修が必要となります。
家の外にもある“暮らしの障壁”
地方の過疎地域では、住宅の問題だけでなく、生活インフラの不足も高齢者の自宅生活を困難にしています。例えば、公共交通機関の本数が少ない、最寄りの病院やスーパーまでの距離が遠い、除雪や草刈りなどの作業が困難といった問題があります。
これらの問題は、高齢者が自宅で安心して暮らすためには、住宅の改修だけでなく、地域全体での支援体制の構築が必要であることを示しています。
自宅での生活を支えるために必要な“介護リフォーム”
高齢者が自宅で安心して暮らすためには、住宅のバリアフリー化や生活動線の改善が不可欠です。手すりの設置、段差の解消、浴室やトイレの改修など、介護リフォームによって生活の質を向上させることができます。
次のセクションでは、具体的にどのような介護リフォームが求められているのか、そしてそれを誰が担うべきなのかについて掘り下げていきます。
高齢者が安心して暮らすために必要な“住宅改修”
▶ 介護リフォームとは?ただの「リフォーム」とは違う視点
一般的な住宅リフォームは、利便性や機能性、美観を高めるためのものが中心です。
一方、介護リフォームは「安全性」「自立支援」「身体機能の補完」といった視点が第一に求められます。
具体的には、次のような改修が多くの家庭で必要とされています:
- 手すりの取り付け
- スロープや踏み台、床面のかさ上げなどの段差解消
- 滑りにくい床材への張り替え
- 扉を開き戸から引き戸・折れ戸へ変更
これらはリフォームとしては「小規模な改修」に見えるかもしれませんが、
高齢者の生活の質(QOL)を大きく左右する重要な設備改善なのです。
小さな工事が、“暮らしの継続”を可能にする
例えば──
- 夜中のトイレの移動時に手すりがあることで転倒を防げる
- 脱衣所と浴室の段差をなくせば、風呂に入ることが怖くなくなる
- 車いすでも通れるスロープがあればデイサービスの利用も続けられる
これらの小さな変化が、「もう自宅では無理かもしれない」という判断をひっくり返す力になることもあるのです。
家族の負担軽減にもつながり、介護離職や施設入所を回避できる例も少なくありません。
▶ 介護保険を活用すれば、費用負担も抑えられる
「リフォームは高い」と思われがちですが、介護保険制度を活用することで公的支援を受けることが可能です。
🔍 介護保険による住宅改修支援の概要:
- 対象者:要支援・要介護認定を受けている高齢者
- 対象工事:手すり設置、段差解消、滑り防止、扉交換、トイレの洋式化など
- 上限額:最大20万円までの工事費用に対して、1〜3割自己負担(原則は1割)
この制度を使えば、自己負担は最大でも2万円程度で済むケースが多く、経済的負担が軽減されます。
また、施工には「住宅改修理由書」や「工事前後の写真提出」が必要ですが、
多くの自治体ではケアマネジャーと連携することでスムーズに進められます。
地域に求められる職人の力──“人に頼られる仕事”で独立するという選択肢
「この人なら安心」──地元で信頼される職人の価値
介護リフォームは、見た目をきれいにする工事ではなく、
高齢者の暮らしそのものを守る仕事です。
依頼主は高齢者本人、またはその家族。
「誰に頼めばいいか分からない」と困っている中で、
すぐに相談に乗ってくれる“顔の見える地元の職人”の存在は、何より心強い。
大手の業者にはできない、「人に寄り添った仕事」がここにはあります。
介護保険制度があるから、提案しやすく・始めやすい
介護リフォームは、介護保険の住宅改修制度により最大20万円の補助が出る仕組みがあります。
工事費の1〜3割の自己負担で済むため、利用者の経済的なハードルも低く、需要が見込みやすい市場です。
住環境の安全性に対する介護・医療業界の意識は特に高く、協力を得やすいことも大きな利点です。病院の理学療法士による利用者の身体機能に応じたアドバイスや、ケアマネジャーによる住宅改修が必要な理由書の書類作成など、様々な関係機関が住環境の改善をバックアップしてくれます。
これに信頼関係が積み重ねていくことで、地域密着ビジネスを行う上で欠かせない基盤となります。
営業や制度対応が不安でも、フランチャイズが支える
「いい仕事はできる。でも、営業は苦手」
「介護保険の仕組みや申請はわからない」
そうした不安を解消するため、介護リフォーム本舗のフランチャイズでは:
- 介護保険制度の知識などを身に着ける開業前研修の実施
- iPadを使った見積アプリの提供
- スーパーバイザーによるサポート
など、現地調査や施工に集中できる仕組みを整えています。
“人に必要とされる仕事”で独立するという道
「自分の名前で仕事がしたい」
「誰かの役に立てる仕事をしたい」
「地元を離れずに働きたい」
そんな想いを持つ職人にとって、介護リフォームは
技術も経験も、すべてが活きる“次の仕事”になり得ます。
需要があり、感謝があり、支援体制が整っている。
そして、自分の町で完結できる。
それは単なる仕事ではなく、地域の暮らしを支えるかけがえのない存在になるのです。
「この家で暮らし続けたい」を支える仕事
高齢者の多くが「できるだけ自宅で暮らしたい」と願い、多くの方が在宅で介護を受けながら生活を続けています。
でもその暮らしには、小さな危険や不便がつきもの。
それを解決できるのが、地域の職人による介護リフォームです。
手すり一本、段差の解消、それだけで「最後まで自宅で暮らす」ことを後押しする力になります。
地元で必要とされ、感謝される仕事をしたいと思ったら、介護リフォームという選択肢はあなたの将来を明るく照らす道となるでしょう。
