日本の65歳以上人口は、2025年9月時点で3,619万人に達した。高齢化率は29.4%で、過去最高を更新している(総務省統計局・令和7年9月14日公表)。
この数字が、介護リフォームという事業領域に関係する。高齢者が自宅で安全に暮らし続けるためには、手すりの取付けや段差の解消といった住環境の整備が必要になる。介護保険住宅改修は、その費用の一部を介護保険で賄える制度だ。
この記事では、介護リフォーム市場がなぜ注目されているかを、高齢化の実態、政府の方針、制度の仕組みから整理する。建設業・リフォーム業の新規事業として介護リフォームを検討している方が、市場の構造を理解するための内容にしている。
介護リフォームとは何か

介護リフォームとは、要支援または要介護の認定を受けた高齢者が、自宅で安全に暮らし続けられるよう住まいを改善する住宅改修だ。介護保険制度の中に「介護保険住宅改修」として位置づけられている。
一般的なリフォームと異なるのは、対象者・対象工事・資金調達の仕組みがすべて制度によって定められている点だ。
対象者と対象工事の基本
介護保険住宅改修の対象者は、介護保険で要支援または要介護の認定を受けた在宅の高齢者に限られる。施設入居者は対象外だ。
対象工事は、厚生労働省が定める以下の6種目に限定される。
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 床・通路面の滑り防止および移動円滑化のための材料変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- 上記に付帯する工事
大規模なリノベーションや内装全体の改修ではなく、生活動線の安全性を改善する小規模工事が中心になる。工事の種類が絞られているため、専門的なノウハウが必要になる半面、施工の範囲は明確だ。
支給限度基準額は1人の利用者につき原則20万円。利用者の自己負担は所得に応じて1割から3割だ。
介護保険住宅改修の適用可否は、利用者の状態、住まいの条件、自治体の運用によって異なる。具体的な判断は、担当ケアマネジャーまたは各自治体の窓口に確認する必要がある。
介護保険住宅改修の申請の流れ
申請は施工前後に住所地の自治体に行う必要がある。ケアマネジャーが作成した「住宅改修が必要な理由書」、工事費用の見積書、工事前の写真が申請書類に含まれる。施工後は完了確認のための書類を提出する。
この手続きの流れが、一般リフォームとの大きな違いになる。施工力だけでなく、制度に沿った書類対応と、ケアマネジャーとの連携が必要だ。
高齢化の進展が介護リフォームの需要を生む理由
高齢化が進むほど、自宅で暮らす要介護・要支援の高齢者の数が増える。これが介護リフォームの需要を生む基本的な構造だ。
65歳以上が3,619万人に達した日本の現状
総務省統計局のデータによると、2025年9月時点の65歳以上人口は3,619万人で、高齢化率は29.4%となった。前年比で0.1ポイント上昇し、過去最高を更新している。
年齢区分別では、75歳以上の人口が2,124万人で総人口の17.2%を占めている。80歳以上は1,289万人(10.5%)だ。
75歳以上の年齢層では要介護・要支援の認定率が高くなる。この層の人口増加が、住宅改修の必要性が高い対象者の拡大につながる。
「2040年には75歳以上人口が全人口の20%に達する」という見通しが示されている。現在の17.2%から、さらに拡大する可能性がある。
ただし、高齢者が増えれば需要が自動的に生まれるとは言えない。介護リフォームの実際の需要は、地域の高齢化率、介護認定者数、既存の事業者数、営業力によって変わる。市場全体の拡大傾向と、個々のエリア・事業者レベルの状況は別に考える必要がある。
75歳以上の急増と在宅介護の関係
75歳以上の人口が増えると、在宅で介護を必要とする人の数も増える。転倒による骨折が要介護度の悪化につながるケースもある。自宅の住環境が安全かどうかが、在宅生活を続けられるかどうかに影響する。
手すりのない浴室、段差の多い廊下、滑りやすい床は、転倒のリスクを高める。住宅改修によってこうした環境を改善することが、高齢者の自立支援と介助者の負担軽減につながる。
在宅介護では、利用者本人が安全に動けるかどうかと同時に、家族や介護職員が介助しやすい環境かどうかも重要だ。住環境の改善は、介護の質と継続性に関わる。
在宅重視の政策が介護リフォーム市場を後押しする構造
高齢者人口の増加だけが市場の背景ではない。政府の方針と住宅ストックの現状という2つの要因が重なって、介護リフォームの需要構造をつくっている。
地域包括ケアシステムと住まいの位置づけ
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けられるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援を一体的に提供することを目指す考え方だ(厚生労働省)。

このシステムでは「住まい」が土台になる。医療や介護サービスを自宅で受けながら生活を続けるには、住まいの安全性が前提条件になる。段差・狭い廊下・和式便所・滑りやすい浴室床など、在宅介護を妨げる住環境は多い。
住宅改修は、地域包括ケアシステムの中で在宅介護を成立させるための住環境整備として位置づけられている。
住宅のバリアフリー化が不十分な現状
高齢者の住宅のバリアフリー化はまだまだ不十分です。
日本の住宅ストックの多くは、高齢者が介護を受けながら暮らすことを前提に建てられていない。既存の住宅を改修する必要性は、高齢者が増えるほど積み上がっていく。
改修の必要性が一度に解消されるわけではなく、利用者の状態が変化するたびに追加の改修が必要になる場合もある。新規の利用者だけでなく、継続的な関係からの追加案件が生まれる構造がある。
介護リフォームが建設業・リフォーム業に向いている理由
介護リフォームは、建設業やリフォーム業の施工力を活かして参入できる領域だ。ただし、参入には制度理解と介護事業者との関係構築が不可欠になる。
既存の施工力を活かせる事業構造
手すりの取付けや段差の解消は、リフォーム会社や工務店が日常的に扱う工事に近い。大型設備の導入や高度な専門技術を必要としない場合が多い。
一方で、一般リフォームとは異なる対応が求められる。施工前の自治体への事前申請、ケアマネジャーとの連携、理由書の確認、工事前後の写真提出など、制度に沿った手続きが必要になる。
施工力に加えて、制度理解と書類対応力を身につける必要がある。この点が、一般リフォームから介護リフォームに参入する際のハードルになる。
価格だけで選ばれにくいビジネスの特性
一般リフォームでは、価格が受注の主な判断基準になりやすい。複数の業者から見積もりを取って最安値を選ぶプロセスが一般的だ。
介護リフォームでは、ケアマネジャーや介護事業者の紹介を通じて案件が生まれるケースがある。この場合、スピード、現地調査の精度、申請書類の正確さ、ケアマネジャーとの日頃の関係が、業者の選定に影響する要素になる。
もちろん、価格競争が一切ないという意味ではない。ただ、価格だけで比較されにくい提案を作りやすい構造があるのが介護リフォームです。相見積もりだとしても、必ず安い方が選ばれるというわけではないのが介護リフォームの大きな特徴でもあります。
介護リフォーム本舗の実績が示す市場の現実
介護リフォーム本舗は、介護保険住宅改修に特化したフランチャイズとして、株式会社ユニバーサルスペースが運営している。経営理念は「快適生活を創る」だ。
2009年から2023年までの工事完了実績は14万件超、2024年の年間工事件数は19,821件。多くの介護事業者との連携で実績を積み上げている。
まとめ:介護リフォーム市場をどう読むか
介護リフォームの需要は、高齢者人口の増加、在宅介護の拡大、住宅ストックのバリアフリー不足という構造から生まれている。
2025年時点で65歳以上人口は3,619万人、高齢化率は29.4%(総務省統計局)。地域包括ケアシステムの推進によって、在宅で暮らし続けたい高齢者を支える住環境整備の必要性は続く。
ただし、市場の存在は個々の事業の成功を保証しない。介護リフォームは、制度理解、書類対応力、ケアマネジャーとの関係構築、施工品質が問われる事業だ。参入を検討する際は、自社の体制、対象エリアの状況、必要なノウハウを確認することが先決だ。
建設業・リフォーム業が介護リフォームに参入する場合、既存の施工力を活かしながら、制度ノウハウと介護業界との接点を加えていく必要がある。
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